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G7広島サミット「共同文書」の注目ポイントを最速解説!?

経済制裁」は戦争を止める手段になりうるのか。

今週末に開催されるG7広島サミット。共同文書の原案の一部が明らかになった。見出しは、「ロシアへの制裁逃れの試みに対抗」。ん? どういうこと・・?

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ご存じのように、G7ではロシアによるウクライナ侵攻以降、経済制裁を一致してかけ続けている。制裁内容はいくつかのメニューとなっているが、記事によると、その1つが「一部の電子部品や半導体など、軍需品や基盤産業に使われる物資」をロシアに輸出すること。こうした物資がロシアの手に渡らないようにすることで、戦争を継続する能力(継戦能力)を損なわせようという試みだ。

しかし、記事によると

G7は一部の電子部品や半導体など軍需品や基盤産業に使われる物資の対ロ輸出を制限しているが、中国など第三国を通じてロシアへ流入していると分析している。

とのこと。つまり、ロシアにしてみれば、直接輸入はできないけれども、中国などの第三国を通じて輸入できている現状があるという。

G7が講じているロシアへの制裁を「逃れ」ようとする試みに、対抗する必要があるというわけだ。

こうしたG7広島サミットの共同文書の原案を読んで、思い起こしたのは、先日の南アフリカの記事。

米国のブリゲティ南アフリカ大使は11日、南アがロシアに武器や弾薬を提供していると指摘し、非難した。

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南アフリカからロシアに向けて武器や弾薬が運び込まれているという指摘があるのだ。

南アフリカは、昔から旧ソ連と結びつきが強く、ロシアに対しても中立の立場をとっているという。欧米からは、「中立を装いながらロシアに寄り添っている」と批判されているらしい。

こうした南アフリカへの指摘は、冒頭に述べた「制裁逃れ」とは少し異なるかもしれないが、要は、世界は必ずしも反ロシア一辺倒ではなく、ロシアも少なくない利益を得ているのだ。よく最近耳にする「グローバル・サウス」諸国は、怜悧にこの状況を眺めている節がある。

こうした中、G7としては、より経済制裁に実効性を持たせるために

G7首脳がそろって制裁回避を認めないというメッセージを出すことで第三国の企業などに関与を思いとどまらせる効果を見込む。サミットで方向性を示したうえで実現可能な方策を練る。

ということのようだ。ただ、

第三国を巻き込む罰則は対象国からの反発が必至なため慎重論もある。実現へのハードルはなお高い。

一方、この経済制裁をめぐっては、上智大学の東大作教授が書かれた『ウクライナ戦争をどう終わらせるか』に詳しく書かれている。実は、これまで歴史上、「経済制裁」が戦争終結に繋がったケースは極めて少ないことがわかる。

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ウクライナ戦争をどう終わらせられるのか。それは、中国の関与なしには難しいだろう。G7という枠組みで、何ができるのか、何ができないのか。可能性と限界を感じるような「共同文書」の原案だと感じた。

日経新聞のコメント欄で、政策研究大学院大学の岩間陽子教授は

事実上中国がロシアに肩入れしており、多くのグローバルサウスの国も、ロシアとビジネス・アズ・ユージャルな現状で、「制裁逃れ」をどう定義するか、それをどのようにG7の外交目的に使うか、工夫が必要になりますね。

と指摘していた。

実際の首脳宣言では、どのような文言にまとまるのか。注目点の1つになるだろう。