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アメリカ政府債務上限問題の本質は・・? 〜トランプの亡霊と、お好み焼き〜

バイデン、広島に来ないってよ? 来週開催されるG7広島サミットにアメリカのバイデン大統領が来られない可能性があると報じられ、衝撃を受けた。

その理由となっているのが、アメリカの政府債務の上限問題である。

米国は政府の国債発行などを通じた借金の総額を法律で定めている。上限に達すると議会の承認を得て引き上げる仕組みだ。

政権と野党共和党で上限の引き上げ交渉が進まず、6月1日にも資金が枯渇し、米国債債務不履行(デフォルト)に陥るリスクがある。

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要は、政府が予算執行のために使える借金総額が足りなくなってきている。通常、議会の承認を受けてこの総額の上限を引き上げるのだが、野党の共和党が強硬に反対し、6月1日にもアメリカ政府がデフォルトに陥る可能性があるという事態となっているのだ。

総額の引き上げをめぐり、共和党が求めているのは、気候変動対策や学生ローンの免除措置の撤廃などだという。これらは、バイデン大統領にとっては譲れない、民主党の重要政策なのである。

24年の大統領選に出馬を表明したバイデン氏は、気候変動対策など自ら実現した政策を共和党の要望通りに取り下げることはできない。党内基盤の弱いマッカーシー氏は統制を保つために党内の強硬派に配慮せざるを得ない。

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こうした共和党の強硬姿勢について、バイデン政権のイエレン財務長官は

「米国民の頭に銃を突きつけた状態」

と批判したそうだ。

なぜここまで共和党が強硬なのか。背景にあるとされるのが、「フリーダム・コーカス」という、共和党内のウルトラ保守グループである。

彼らは中絶の規制強化や移民排斥などを訴える議員集団で、立ち上げたのはあのフロリダ知事のデサンティス氏と言われる。そして、何よりもトランプ前大統領への忠誠を尽くす集団である。

今年の1月、アメリカ下院議会で、マッカーシー議長の選出をめぐって何度も投票をやり直す超異例の事態となったのは記憶に新しい。同じ共和党ではあるけれども、態度が気に入らないと納得せず、マッカーシーに投票しなかったために、票が過半数に達せず、15回も下院議長選がやり直された。160年ぶりの事態だった。

要は、私の解釈も混じるが、トランプの亡霊が共和党内に残って影響力を行使し、バイデンを苦しめているのである。

もっというと、このようなアメリカの分断や混乱を、冷静に眺め、隙を窺っているのが中国とロシアである。

もし万が一、バイデンが広島サミットを欠席するような事態となれば、日本のメンツは丸潰れだし、G7諸国の結束はおろか、「グローバル・サウス」と呼ばれる勢力への働きかけも頓挫する恐れがある。そうなれば、ウクライナ侵攻への対応も微妙となりかねず、中国への毅然とした態度を示すことも難しくなるだろう。

トランプの亡霊が、国際社会に与える影響は今なお非常に強いと言わざるを得ない。

その一方、トランプとは、アメリカが追い求めてきた自由民主主義とグローバル資本主義の産み落とした忌み子でもある。

アメリカは、この強烈な自己のジレンマを乗り越えられるのか。

まずは来週末、バイデン大統領に振る舞われるはずのお好み焼きにその運命がかかっている。かもしれない。